宇都宮市は昔から「雷都」と呼ばれている。とかく社名などに使われる。落雷の被害に備え、「雷保険」に入る人もいるらしい。雷は本当に多いのか。気候変動の影響はあるのか。調べてみた。
「雷都」と言われるからには、1年間に観測される「雷日数」は全国有数の多さに違いない。しかし、宇都宮地方気象台に尋ねると、宇都宮市は10位以内に入っていなかった。
目視観測に基づく年間平年値をみると、同市は26・5日(1991年から30年間の平均)で全国11位。最多の金沢市(45・1日)に比べて20日近く少ない。上位は新潟市(34・7日)など、東北から北陸にかけた日本海沿岸が占めている。
しかし、「雷都」の称号は、夏に限れば、ふさわしいかもしれない。
同気象台によると、宇都宮市の4~9月の雷日数の平年値は24・2日で、全国で最も多い。金沢市などの日本海側は冬の雷発生数が多く、中根秀行・気象情報官は「宇都宮は冬季の気候が安定し、雨が少ない。冬に雷はほとんど観測されない」と話す。
では、なぜ夏の宇都宮は雷が多いのか。
気象台によると、地形が関係している。北側に日光連山や那須岳などの山地が連なり、南側は平野部となっている。南寄りの風が入りやすく、暖められた空気が山の斜面に沿って上昇し雷雲が発生するという。
「地震、雷、火事……」と恐れられてきたように、落雷は人の命を脅かす。直接落ちる「直撃雷」だけでなく、電線などを伝わって高電圧が住宅に入り込む「誘導雷」も電気製品に被害を及ぼす。同気象台は昨年までの10年間、保険金請求の根拠となる雷発生の気象証明書を79件発行した。
証明書の発行件数は減少傾向にあるという。だが、宇都宮の雷日数は一昨年が51日、昨年が44日で、いずれも平年値を大幅に上回っていた(2020年から自動観測)。ここ数年の増加は、気候変動の影響なのだろうか。
例えば、栃木県で滝のように雨が降る「1時間降水量50ミリ以上」の最近10年間(2011~20年)の平均年間発生回数は、統計開始当初の10年間(1979~88年)と比べ約1・3倍になっている。その一方で、宇都宮市で雨の降らない日は、この100年間で増える傾向にあるという。
中根情報官は「雨が降らなければ雷は発生しにくい。気候変動が雷発生の増減に影響しているか、していないのか、何とも言えません」と話している。(中村尚徳)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル